空色の瞳にキスを。
二人の少年の勢いにおされて、あまり表情を顔に出さない黒髪の少年も僅かだが目を見開いている。
重苦しい空気を壊してくれたのは二人の見ず知らずの首狩りらしきこの少年達で。


良かったと、微かに唇を動かして。

─ありがとう。

心の中で、感謝した。

─それにしても、ルグィンはある場所では嫌われて、ある場所では憧れなんだな…。

苦笑して、人が集まり始めたルグィンの側からそっと離れた。
それに気付いた黒髪の少年がぱっと目を合わせてきたが、ファイはテラスの方を指差して少し口端を上げる。

目で頷き合って視線を外し、ファイは逃げるようにその場を後にした。

テラスへ出て、一息。

ぱたん、と扉がしまったとたん、霞んで聞こえる騒ぎ声。

扉を隔てるとうんと穏やかに聞こえる人声に、扉を背にしたファイはパーティーの灯りの中微笑んだ。


眼下にはスズランの屋敷の中庭が見えて、心が静かにおさまっていく。
冬の寒さが身を包み、昂った心を冷やしていく。

「良かった、誰もいない…。」

ナナセは安心した声を漏らす。

ここは景色の綺麗なベランダ。
だが、季節は冬で。

魔術で体をくるんでまで、凍えるような空気の中にいようと常人は考えない。

ひとりになりたい彼女にとって、格好の逃げ場。

今日の空は雲に隠れて全く星明かりのない、どんよりとした空だった。
その空を仰いで歯を食い縛る。

怒りはあまり表に出さないようにしているが、今のはやっぱり良い心地はしなくて。
ルグィンの上官だというのに、口答えをしてしまったことを一人反省する。

漏れた灯りの零れたタイルの床を逃げ出して、影へと歩む。
ベランダの手すりに腕を投げ出して、間に顔を埋める。

─だめだめ、あたし。

心を知った今の自分は、知らないときよりも酷く脆いから。
他人を知らないあたしにはもう、戻れない。

─だから、しっかりしなきゃ。

空気と同じ冷たさの手すりに額を付けて、自分を落ち着かせる。


伏せているファイの後ろで、中へと通じる綺麗な扉が軽い音をたてて開いた。

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