空色の瞳にキスを。
「ナコも、言われるの?」
隣で聞こえた酷く優しい、心配するような声。
心地よさを隠して変わらない調子を装って、声を出す。
「そ。」
「辛く、ない?」
─俺にはそんな声かけてくれる奴、もういない。
ナコにとって、ファイの声音は久しく耳にしていなかったもので。
─あいつはこれを毎日聞いているのか。
そうなら少し羨ましいと、赤目を揺らしてナコは思った。
「もう嫌われるのには慣れた。
だけどあんな風にされるのが嫌で、知り合いともいろんな場所、歩けなくなった。
異形の俺達を作ったのはあいつらなのにな。
造った時は俺らが一番強くて、あいつらが出来たら劣った俺達は要らなくなって。
そうやって、勝手に憎まれて嫌われてするのは、嫌だな。」
ファイはじっと聞いていた。
思わず零れた本音は、彼女の眉を下げさせるくらいの威力はあった。
泣きそうな目、噛み締められた唇。
それに嘘を見付けられなくて、これは演技ではないと確信する。
─良かったな。
─ルグィン、お前の隣がこいつで。
弟分の黒猫の隣にこれがいるとなれば、それは良かったと思えてしまう。
黒い猫と追われる王女の取り合わせはとても滑稽で、それでいて。
―それでいて、ぴったりで。
「スズランは?」
ナコがゆらりと話を変えれば、ファイはゆっくりと付いてくる。
「いつも元気だよ。
お姉さんみたいにあたしたちの世話を焼いてくれるよ。」
「そうか。」
安堵によく似たため息を吐いて、笑う青年。
「会いに行かないの?
たった三人の仲間…でしょ?」
言うのを躊躇うように、言葉尻が小さくなる。
なんともないように、ナコは明かりを見ながら呟く。
「忙しいだろうしな、俺もあいつも。」
「そっか…。」
俯き瞳を伏せた、彼女。
寂しそうに呟く心の奥は、ナコには計り知れなかった。
長い沈黙のあと、黒髪の青年はポツリと言葉を落とした。
「お前、優しいな。」
突然すぎる誉め言葉には目を丸くした少女。
「え…。」
その表情を内心笑いながら、偽の青年は続けた。
「人のこと考えて、あの時も、今も。」
そこで一呼吸。
余韻が消えぬうちに、ナコは言葉にしてしまう。
「お前があいつの隣にいてくれて、良かったよ。」
風に流されていくその低い声が、泣きそうに優しく聞こえて。
いつもはこんなこと言う柄じゃないんだけどな、と苦笑して隣の青年は偽色の髪をがりがりと掻く。
そんなナコの戸惑うような、ぎこちない振る舞いを目の端に捉えて、ファイは手すりに寄りかかって庭に視線を移した。
隣で聞こえた酷く優しい、心配するような声。
心地よさを隠して変わらない調子を装って、声を出す。
「そ。」
「辛く、ない?」
─俺にはそんな声かけてくれる奴、もういない。
ナコにとって、ファイの声音は久しく耳にしていなかったもので。
─あいつはこれを毎日聞いているのか。
そうなら少し羨ましいと、赤目を揺らしてナコは思った。
「もう嫌われるのには慣れた。
だけどあんな風にされるのが嫌で、知り合いともいろんな場所、歩けなくなった。
異形の俺達を作ったのはあいつらなのにな。
造った時は俺らが一番強くて、あいつらが出来たら劣った俺達は要らなくなって。
そうやって、勝手に憎まれて嫌われてするのは、嫌だな。」
ファイはじっと聞いていた。
思わず零れた本音は、彼女の眉を下げさせるくらいの威力はあった。
泣きそうな目、噛み締められた唇。
それに嘘を見付けられなくて、これは演技ではないと確信する。
─良かったな。
─ルグィン、お前の隣がこいつで。
弟分の黒猫の隣にこれがいるとなれば、それは良かったと思えてしまう。
黒い猫と追われる王女の取り合わせはとても滑稽で、それでいて。
―それでいて、ぴったりで。
「スズランは?」
ナコがゆらりと話を変えれば、ファイはゆっくりと付いてくる。
「いつも元気だよ。
お姉さんみたいにあたしたちの世話を焼いてくれるよ。」
「そうか。」
安堵によく似たため息を吐いて、笑う青年。
「会いに行かないの?
たった三人の仲間…でしょ?」
言うのを躊躇うように、言葉尻が小さくなる。
なんともないように、ナコは明かりを見ながら呟く。
「忙しいだろうしな、俺もあいつも。」
「そっか…。」
俯き瞳を伏せた、彼女。
寂しそうに呟く心の奥は、ナコには計り知れなかった。
長い沈黙のあと、黒髪の青年はポツリと言葉を落とした。
「お前、優しいな。」
突然すぎる誉め言葉には目を丸くした少女。
「え…。」
その表情を内心笑いながら、偽の青年は続けた。
「人のこと考えて、あの時も、今も。」
そこで一呼吸。
余韻が消えぬうちに、ナコは言葉にしてしまう。
「お前があいつの隣にいてくれて、良かったよ。」
風に流されていくその低い声が、泣きそうに優しく聞こえて。
いつもはこんなこと言う柄じゃないんだけどな、と苦笑して隣の青年は偽色の髪をがりがりと掻く。
そんなナコの戸惑うような、ぎこちない振る舞いを目の端に捉えて、ファイは手すりに寄りかかって庭に視線を移した。