空色の瞳にキスを。
ナコの口調は、明らかに今までと違って。

─多分、この人は根は優しい人。

─ルグィンやスズランを、仲間を大事にする優しい人。


そんな人だから敵である自分と話に来たんだろうとファイは目を閉じて感じる。

─本当の自分を知る人といれば、静かにナナセが呼び起こされて。

覚醒したナナセを上手く隠せなくて、ファイを演じきれない。

だから物を考えるナナセの心と、他人を演じるファイの姿がずれて、上手く線引きが出来なくなる。


ナナセの心とファイの姿が融けて、姿は違えどナナセとしての思いを産み出す。

─仲間想いの優しい人となんか、あたしも敵にはなりたくない。

今一つ信頼の確証を得られなくて、彼女は確実な言葉を欲する。

「ルグィンの隣にいるあたしを、信じてくれるの?」


ナコは一瞬動きを止めた。
また明かりのある窓を眺めて、息を吐いて言葉を紡ぐ。

「わからない。
お前の優しさは分かったけどそれが演技だとは言えないから。

嘘で塗り固めた人格でも、生きていけるからさ。
その方が楽だという時だって、あるから。」

嘘だってつけたのに、ナコは黒い瞳の力に負けて正直に本音を口にする。

「そう。」

─あくまでも信じていない喋り方。

きゅ、と息が止まって、ファイの心に悲しさが胸に滲む。

─どうしたら、信じてもらえる─?

言葉に迷いながら、口を開いた瞬間。

がらり、急に乱暴に扉が開けられた。

「おま…!」

焦りを含んだそれは、彼女が聞き慣れた人のもの。


「「ルグィン!」」

振り向いたナコとファイの驚き声が重なった。

「何しに、来た…!」

目の前の二人の距離にも、なにもかもに、焦りを含んだルグィンの声。


「ここではなにも起こさない。

ただ、お前が大事にしていた人だから話してみたかっただけ。」

帽子の下の金の瞳が安堵に力が抜ける。

ずっと見てきた弟分にしてはあからさますぎるその反応に、ナコは顔に出さないように驚く。

「まず扉を閉めてくれよ。」

仁王立ちの黒猫に、ナコが落ち着かせようと声をかける。

扉を閉めて、振り返る。


「お前は、俺の敵?」


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