【BL】俺がお前にできること
そんな話してる鈴の表情が気になって、ちらりと見てしまったのに後悔した。
あぁ……鈴の本心を知ってしまいそうだ。
郁馬への想いを知ってしまいそうだ。
…やだ。知りたくない。
何も知らなければ、俺は誰にも郁馬を譲らなくて済む。
すると、郁馬がこっちを見た。
…郁馬……
にこりと笑って手を振ろうとして制止した。
「い、郁くん…っ」
「…すーちゃん」
「おめでとう!次も勝ってね」
鈴が照れ臭そうに言葉を紡ぐ。
俺が言いたかったこと、先に伝えてしまう。
それに……郁馬は
俺に気づいてるのだろうか?
俺がここにいるって、わかってるのかな?
郁馬の視界には、鈴しか映っていないんじゃないのかな?
そんな郁馬に俺が手を振ったって、言葉を紡いだって、きっと届かない。