狼さまと少女
私とて、何も知らない訳ではない。
山神様の妻となるべく巫女様に教えて頂いた際、契りについても触れられたから。
巫女様は身を任せれば良いのです。と仰っていたけれど…
「どうかしたのか?」
俯いていたままの私に声がかかる。
低い落ち着いた声だ。
声で私をこちらに連れて来て下さった青年だと分かる。
私は慌てて、それでもゆっくりと頭を下げた。
そして先程尋ねられたというのに、返事をしていない事に漸く気づいた。
それでも青年は気にしていないのか頭を上げろと仰った。
言われるがままに頭を上げ姿勢を正す。
いつの間にいらしたのだろう。