ぬくもりをもう一度
「ゴメン。

 俺、そういうの……

 苦手だから」


“面倒”


そう口にしそうになって

慌てて言葉を選んだ。


“苦手”


その方が、

まだ響きとしては柔らかくて

衝撃も少ないだろう。


「そんな阿久津くんが、

 今日は私の誘いを受けてくれた」


ワインのせいなのか、

頬を赤く染めた野々原が、

そう言って俺を潤んだ目で

見つめる。


今日の誘いは断りきれなかった、

それだけなのに。


無言のまま残りのワインを

飲み干すと、

俺は野々原の甘い視線を

交わすように口を開いた。




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