冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「え、大丈夫ですよ!もう大丈夫」
〝笑顔〟で肩を上に挙げてみせようとすると、
ズキン
響く痛みが〝笑顔〟を引きつらせた。
「ほら、無理しない」
持っていたカルテと珈琲を
待合室のテーブルに置くと、
少し叱る様な口調で、吉水さんは私の肩に優しく触れる。
そして、
制服の衿で隠れた首筋の大きめの絆創膏の様子も見る。
その表情は、
さっきまでの柔らかで気の抜けた感じとは違う、
鋭い視線。
全部、
見透かされてしまうんじゃないかと、
怖くなるくらいの視線に、
私は、ぎゅっと眼を閉じた。