冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「うん、大丈夫そうだね。でも無理しちゃ駄目だよ?」
優しい声が香ばしい珈琲の匂いとともに、
少し遠のく。
私は、ホッとして、
持っていたドーナツの箱を差し出した。
「今日はお土産があるんです」
「へぇ、それはあいつも喜ぶな」
「いつもの部屋にいますよね」
「あぁ、行ってやってくれる?オレ1人じゃ相手しきれないから」
参った、と両手をあげる仕草で、
吉水さんは優しく微笑む。
視線を、
廊下の奥へと、向けて――