冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「ドーナツ?」
素っ気ない口調だけど、夕綺さんの視線は、
私の持つドーナツの箱に注がれていた。
「え、はい…私のバイト先がドーナツ屋なんです」
「ふーん、ミオリはドーナツ屋でバイトしてるんだ?」
「そうですけど…夕綺さん、ドーナツ嫌いですか?」
「……嫌いじゃないわ」
「よかった!今日は私が選んできちゃいましたけど、
他に食べたいドーナツがあったら、教えてくださいね」
「……ダークチョコのは、ある?」
「あります。よかった!今日買ってきました」
夕綺さんの言葉が嬉しくて、
ドーナツの箱を夕綺さんのベッドの近くで開くと、
辺りに甘い香りが広がった。