冷たい雨に咲く紅い花【後篇ーside実織ー】
「ミオリ、次来るときは服もお願いね」
「実織ちゃん、もうお使いはしなくていいから」
二人の声が重なる。
えーと……
と、とりあえず……
「お、お茶でも飲みませんか?
吉水さんは珈琲ですよね。夕綺さんは……」
「紅茶。マリージュのロイヤルブレンドね」
ダークチョコのドーナツを頬張る夕綺さんの声に、
「そんなのはここにはないよ。オレ珈琲だし。
あ、もしかしたら、棚にあったかなぁ?
一昨年あたりのどっかの紅茶が」
「イヤよ、そんな古いの!」
「ワガママ言うな、患者が」
「よく言うわ、ヤブ医者」
軽快な吉水さんと夕綺さんの会話に、
自然と笑みが零れる。
「今日は外の自販機の紅茶で我慢してください。
夕綺さん、今度紅茶買ってきます。
服は私じゃわからないので、今は我慢してくださいね」
〝笑顔〟でそう言って、
私は部屋の扉を開けた。
白い廊下に出ると、
また、
くらりと目眩がした。
「……ふぅー」
白い廊下の壁に寄り掛かり、
眼を閉じ深呼吸をすると、
だいぶ楽になる。