風の恋歌

 命を運ぶことに夢中になっていた私は、聞こえてきた歌声にどきりとした。

 あの人だ!

 私は突然の強風に驚く蜂達をよそに、あわてて声のほうへと駆けていった。

 彼は、花畑の近くのベンチにいた。
 機嫌が良さそうに歌っている。

 なんて、暖かい歌。
 とても、穏やかで、優しい歌。

 今日は、彼は一人ではなかった。
 隣には、可愛らしい女の人がいた。
 彼女は熱心に彼の歌を聴いている。
 彼女の表情は生き生きとしていて、彼の歌を聴いていられることが、彼の隣にいられることが、とても嬉しいと表情でわかった。
 彼も、彼女に優しい視線を向けて、愛しい者のために歌っているようだった。
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