風の恋歌
届いて。
お願い。
私は命を運ぶものだから。
お願い。
彼が伸ばした手に、彼女が届く。
彼はあわてて彼女を引き上げた。
よかった。
彼女が助かったのを見届けたと同時に、私は力を失って落ちた。
力を、使いすぎた。
一所に、とどまりすぎた。
落ちていきながら、私は不思議と穏やかな気持ちだった。
私はきっと、このまま空に還っていくのだろう。
使命を果たせたわけじゃない。
それでも、大切な何かを守れた気がした。
そのまま、私の意識は、はじけて消えた。