風の恋歌

 届いて。
 お願い。

 私は命を運ぶものだから。

 お願い。

 彼が伸ばした手に、彼女が届く。
 彼はあわてて彼女を引き上げた。

 よかった。

 彼女が助かったのを見届けたと同時に、私は力を失って落ちた。
 力を、使いすぎた。
 一所に、とどまりすぎた。

 落ちていきながら、私は不思議と穏やかな気持ちだった。
 私はきっと、このまま空に還っていくのだろう。
 使命を果たせたわけじゃない。
 それでも、大切な何かを守れた気がした。


 そのまま、私の意識は、はじけて消えた。


< 18 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop