風の恋歌



 気づくと、そこには優しい顔で私を見つめる人影があった。

 おかしい。
 私は消えてなくなったはずなのに。

「気がついたかい、優しいウィンデーネ」
「!」

 その声に、驚く。
 だって、それはあの「声」だったから。

 私はまじまじと目の前の人影を見つめた。

 柔らかな金の髪に縁取られた、美しい顔。
 太陽のように、神々しい存在感。

「えっと……」

 戸惑う私に、彼はそっと手を伸ばした。

「己の命と引き換えに、そなたは命を守ったな」

 その言葉に、やはり自分は消えたのだと思った。
 そういえば、私はさきほどから動いていないのだ。
 一所にとどまり続けたことが無かったから、少し奇妙な気分になった。
< 19 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop