風の恋歌
駆け続けることに、迷いはない。
駆け続けること以外に、私は生きるすべを知らない。
年老いたウィンデーネが言っていた。
風が尽きれば、命は失われるのだと。
彼女はそのしばらく後に、勤めを終えて、空に消えた。
消えて行く彼女を見たときは、不思議な気分になった。
全てをやり遂げたことを疑わないように消えていく彼女は、とても穏やかだった。
歩みを止めてしまった彼女を見届けるには、そっと彼女のそばを吹き続けるしかできなかったけれど、彼女は幸せそうに見えた。
これが、ウィンデーネの命なんだな、と思った。
私も、彼女のように穏やかな最後を迎えたいと思った。
今はまだ、歩みを止めていいほど自分の務めを果たせていない気がするけれども。
いつかは、きっと私も。
そう思っていた私は、風として生まれたことに、こうも悩む日が来るとは思っていなかった。