風の恋歌


 人間。
 私は人間という生き物にあまり良い印象を抱いてはいなかった。

 初めて人間という生き物を見たとき、私達ウィンデーネと似たような容姿をしているのに驚いた。
 だけど、すぐに気づいたのは、彼らには私達が見えないということだった。
 動物達や、植物達には私達が見えるのに、どうして彼らには見えないのか不思議に思った。
 人間という言葉を教えてくれたウィンデーネは、それは彼らが命を奪うものだからだと言った。

「でも、なぜ? 狼は、うさぎを食べるけれども、彼らには私達が見えているでしょう?」
 私の問いに、彼女は嫌悪さえも抱いたよな表情で、
「狼がうさぎを食べるのは、生きるためでしょう? でも人間は、意味もなく命を奪うのよ」
 そう教えてくれた。

 そのときは納得できなかったけれども、あちこちを駆け回るうちに、自分の目で確認できた。
 人間は、くだらないことで、命を奪うのだと知った。
 人間は、他の命をなんとも思わないで、命を奪うのだと知った。
 人間は、人間同士でさえ、命を奪うのだと知った。
 だから、汚れてしまっている彼らの瞳には、私達は映らないのだと知った。

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