親友を好きな彼
私の所属する法人一課は、大口の超優良顧客が相手で、その忙しさは半端ない。
特に、この年末にかけての駆け込み契約更新時期は、怒涛の忙しさだ。
そんな中で、“新入社員”として入社してきた嶋谷くんが、とれほどデキル人材か、ある程度想像はしていたけれど…。
「嶋谷!この半月で断トツのトップだな」
「ありがとうございます」
上機嫌で、社内データをチェックする課長と、相変わらずの余裕たっぷりな笑顔の嶋谷くん。
もはや、私の立場なんて無いも等しく、彼に教えてあげる事なんてない。
「すごいじゃない。たった半月で契約数トップどころか、予算もトップなんてね」
呆然と立ち嶋谷くんを遠くから眺めていた私に、亜子が背後から呟いてきた。
「あ、亜子。やっぱり、亜子もそう思うよね?」
いつもトップ5入りをしている“常連”亜子も、感心した様に嶋谷くんを眺めている。
「思う。これで彼の株、かなり上がったんじゃない?」
「株?」
「うん。まあ想像出来るけど、彼って女子社員の憧れの存在だから」
不適な笑みを浮かべ、亜子は私を見た。
「憧れ?」
確かに、いかにもモテそうな人ではある。
外見だけなく、これだけ仕事も出来るんじゃ、憧れの存在になっても仕方ないか。
小さくため息が漏れた時、
「それより由衣、ちょっと…」
珍しく亜子が、給湯室へ私を促してきたのだった。