親友を好きな彼
「大学って…どこ?」
嶋谷くんは同じ歳。
そして地元。
そして、この香水…。
大翔を思い出しながら、ある事を思い出していた。
大翔とは大学時代から付き合っていたけれど、なぜか友達に私を紹介してくれる事はなかったのだった。
話しもしてくれなくて、数人の男女の友達がいるのは知っていたけれど、その誰もニックネームすら知らなかった。
ただ、私の友達には気さくに会ってくれるし、浮気の心配をかける様な人でもなかったから、特に彼の友達について、あれこれ詮索をするつもりもなかったけれど…。
一度だけ、大翔が恥ずかしそうに友達の話しをしたのを覚えている。
確か、海外旅行に行った男友達が、香水をお土産に買ってきてくれたけれど、一瓶使い切る自信がなくて、みんなで山分けにしたと言っていた。
親指の爪ほどの大きさの瓶に分けたんだって、当時見せてくれたっけ。
だけど、その後その香水は著名人も愛用しているとかで、たちまちに有名になり、大翔も気に入った様でずっとつける事になった香水だ。
そんな有名な香水だから、嶋谷くんが使っていても、不思議には思わなかったけれど…。
だけど、彼が地元って事は…。
「俺の大学?K大だよ」
「K大!?」
じゃあ、やっぱり大翔と同じ大学だ…。
「何?何かあった?」
私の尋常じゃない驚き様に、嶋谷くんは怪訝な表情を向ける。
「あのね…、大翔。尾崎大翔くんて知ってる?」
心臓が痛いくらいに鼓動を打つのを隠す様に、平静を装い聞いたつもりが、声が震えてしまった。
そんな私に、嶋谷くんの表情はさらに怪訝さを増す。
「知ってるよ。友達だから…」
「友達…」
まさか、こんな形で大翔の友達と知り合いになるなんて。
偶然より、運命を感じてしまう。
それくらいに今、私は大翔で心がいっぱいになっていた。
「佐倉、大翔を知ってるのか?」
「知ってるよ。私の元彼だもん」