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「ピーキー!」


すぐに、大きな鳥が鳴くようなひゅうという高い音が返ってくる。
その声の持ち主は、茅野の姿を見つけると、一目散に近寄って来た。
爬虫類のような丸い黄色の目を細めて、いかにも上機嫌、という顔だ。


象ほどもある大きな体。これでまだ半年にもならない子供らしい。
茅野の知っている限り、こんなに大きな動物は今までに見たことがなかった。

その口は目の後ろ近くまで大きく裂け、隙間からは牙が覗いている。
額から二本のドリルのように後ろに伸びた角。木の根のようだ。
目や口の周りの硬い鱗と、短い毛に覆われた体。
淡い茶の毛並みは、意外なほどつやつやしている。
鳥とトカゲと馬を全部合わせてみたような骨ばった脚の先には、巨大な爪が剥き出しになっていた。

そしてなにより目を引くのは、背中に折り畳まれた翼だ。


「ピーキー、飯だぞ」
「……私、ここに来るまで、ドラゴンって肉食だと思ってました」
「そうなのか? でも、爬虫類と鳥の間みたいな生き物なんだから、食べ物だってそうだろ、普通」
「うーん……そうですね?」


二人がどことなく間抜けな会話をする横で、荷車から降ろされた食糧に美味しそうにかぶりつくのは、どこからどう見ても、ドラゴンだった。


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