執事の戯言
用心を払いながら、「…はい」と応えるが、向こうは名乗りも上げず、無言の空気が流れるだけ。
念のためのときを考えて、いつでもやれる覚悟を決めて扉を開けるとそこには──。
「璃愛……お嬢様?」
白い肌によく馴染む白のフリルが特徴的な寝間着姿の璃愛お嬢様が、一人佇んでいたのだ。
「どうなされたのですか?」
幼少時代に旦那様から贈られたウサギの大きめの人形の手を握りながら、小声で「……れないの」と呟いたが、よく聞こえない。
「?」
首を傾げると、顔を真っ赤にして「眠れないのよ!」と寝静まった夜には大きすぎる声で言った。
一瞬、何を言われたのか理解ができず、涙目ながらも俺に頼ってきた彼女を数秒見つめては、はっと我に返った。
理解し始めてくると、思わず笑みが溢れる。
「わっ、笑ったわね?!」
「いえ、笑ってませんよ……クククッ」
この高ぶる感情が抑えられず、それが笑いとして出てくるのだから、必死で隠そうと手で顔を覆った。
「もぉー!笑ってるじゃない!別にいいですよーだ。笑われる覚悟なんて、扉をノックする前から出来てたわ…!」