矢刺さる先に花開く


暫くして…後白河院は、千手観音像を納める蓮華王院が完成しても尚、訪れてこない我が子・二条帝に憤っていた。


その事は、重盛の耳にも入っていた。


――「此度、参議に上がらせて頂きました嫡男・重盛にござります」


その日は、清盛が重盛を連れて二条帝に謁見していた。


そこで――重盛は誰も思いもしなかったことを言い出したのだ。


「恐れながら…帝は、蓮華王院へは御行幸有らせられぬのですか」


驚いた清盛は重盛に控えるよう命じた。
乳母として二条帝に仕えていた時子も、驚きを隠せない。
だが、重盛は続ける。


「上皇様の御気持ちをお考えになられては如何にござりましょうか。帝の御父君に有らせられるお方にござりましょう」


「天子たる者、父などおらぬ!……朕はそう心得ておる」


二条帝は不快感を露にすると、そのまま立ち去ってしまった。


――「そなたは何を考えておるのだ!」


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