やさぐれ女の純情


あっ、また笑い出したよ。


ったく、目の前で苦しんでた人をよく笑えるよね~。


普段、声を上げて笑うことなんてないくせに。


こんな時に吹き出しやがって……やだ。


私、そんなにひどい顔してたのかな? 


ま、すでに泣いてしまったあとだしね、別にいいけど。



はぁ~、なんでこんなやつ好きになったんだろ……。


自覚したのは大学の時だけど、


今思うと高校の時から好きだったのかも…………。




フフッ、浅ましい女。



「出会ったその日からあなたのことが好きでした!」


なんて言いえると思ってるのかね? 


こいつと初めて話した日、私が好きだったのも、付き合ってたのも、


あのサルみたいな男だったって事実は覆らないのにね。




〝建築家になりたい〟




たまたま、目指す道が同じだっただけ。



そんなこいつと放課後、


お互いに調べた大学のことをよく話すようになってからも、


こいつが行きたいと言った大学を受験しようと決めた時も。


高校を卒業するまでの間、


手をつないで、


キスをして、


三度も体を許した相手はこいつじゃないのに。




もし、その相手がこいつだったら…………。




フフッ。


ンフフフッ。


あ~あ、バカらしい。


今更、無い過去を妄想したって侘しくなるだけよっ!


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