やさぐれ女の純情
――んぐっ。んぐっんぐ――
咲樹は、また痛みを感じないよう、
噛んだ玉ねぎを何回かに分けて喉に送り終えると、
ちらりと清久に視線を送った。
「なにを微笑んでるのよ」
「えっ?」
「ん、んっ。だから、なにニヤついてんのかって聞いてるの!」
微妙に声がかすれた咲樹は、喉に感じた小さな違和感を取り除くため、
咳払いをしてからそう言い直した。
「ニヤついてたのは、あなたでしょーが」
「えっ? 私?」
「そう。三度もね。
ぼくが炒めた玉ねぎは、思わずニヤついてしまうほどおいしかったかね?」
「…………ぶふっ」
玉ねぎは、本当においしかった。
それに、あれは自分をせせら笑っていました!
なんて言えない。
そして何より、
自分の作った料理を私が喜んで食べていると勘違いし、
満足気に微笑んでいるこの男に、恥をかかせるなんてこと出来る訳がない。