やさぐれ女の純情
家の中でなら誰がどんな服装でもさほど気にはしない。
だが、ひとの目がある外となると話は別だ。
明らかに部屋着用のジャージで堂々と外を歩ける人の気がしれない。
咲樹は、そんな人たちに自分と同じ神経が通っているとは
到底、思えないのだ。
「よく、そんな格好で外に出て来られるよね? 恥ずかしくないの?」
昔からそうだ。こいつは、私の毒気を抜くのがうまい。
今にも発狂して虎になってしまいそうなほどの怒りを
ぶつけてやろうと思って来たのに。
頭に一本の花を咲かせたマヌケ面で登場されては、発狂のしようがない。
「はぁ~。よくもまぁ、この女は。いけしゃあしゃあと……」
持っていた携帯をジャージのポケットに押し込み、
男が咲樹の手から荷物を奪おうと腕を伸ばす。
「なっ、なによ」
小さく一歩後ずさり、体を強張らせた咲樹の肩からバッグをそっと奪うと、
その男は何か言いたげな目で、はっきりとものを言った。