やさぐれ女の純情
「あなたねぇ。それが、心配でわざわざ出迎えに来た友に
開口一番、言う言葉かね?」
「…………」
「ん?」
自宅の方へと向きを変えた男が、
絶妙なタイミングで押し黙った咲樹の言葉を促す。
「悪かったわね。頼みもしないお気遣い、痛み入りますっ」
「はぁ~、四十点。赤点ギリギリ……」
そう呟き、大袈裟に項垂れながら歩き出した男が、数歩進んで立ち止まった。
咲樹はまた嫌味を言われるのかと思い体に力を入れ、身構える。
すると男は、咲樹の予想に反し黙ったまま空いている右腕を後ろに伸ばすと、
お尻のあたりに置いた手を忙しなくグー、パー、させた。
その手の動きに誘われて歩き出した咲樹は、男のすぐ後ろで足を止める。
まだ動いている男の手をしばらく見つめ、
咲樹はゆっくりと手を伸ばしていった。
そして、開いた男の手に自分の指先が触れた瞬間、
迷いを吹っ切ったその手は赤いチェックの綿入れの方を強くつかんだ。