やさぐれ女の純情


「はぁ~、かわいげのない女」


「うるっさい」


そんなこと、とっくに自覚済みよ! 


ついさっきまで彼氏だった奴にそう言われてここまで来たのよっ。


彼氏? フッ、あんな奴……消去してやる。記憶から消してやる!


誰が覚えててやるかっ。


かわいくない?


ハッ、どこ見て言ってんのよ! 天然でこの顔なら、中の上には入るわよっ。


男なんて、どいつもこいつも同じことしか言えないくせに。


だいたい、こいつに言われる筋合いなんてないのよ。


彼氏でもないこいつに……なんで言われなきゃいけないのよっ!


一度毒を抜かれた咲樹の心が、新たな毒に侵される。


今度の毒は強烈だ。


男の服をつかむ咲樹の震える手はみるみる振幅を増し、


少し開いた唇も戦慄き始めた。



――やばい――


抑え込もうとすればするほど暴れだす毒に侵された胸が、締め付けられる。


その苦しさに耐えられず、咲樹は言葉にならない声を漏らした。


「くっ、うっうっ」



「あのぉ。こんなところで泣かないでくれます?


 人に見られたら恥ずかしいでしょーが」






「ぶふっ」




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