やさぐれ女の純情


笑い過ぎて苦しくなった咲樹は、


手を引かれながら深い呼吸を繰り返す。


二人の声が止んだ分の夜の静けさと、肺の奥まで届いた冷たい冬の空気が


咲樹の心に深く凍みる。



――あんたといるからだよ、キヨ。


 私にはあんた以上に好きになれる人なんていない。


 いくら探しても、やっぱり見つからないよ――



勝手に溢れ出そうとする想いを鎮めるため、


咲樹は素早くつかまれた手首から目線を逸らせた。


必然と上に向かった目線は、手を引く男のマヌケに揺れる前髪を捕らえる。


咲樹は、その前髪を凝視したままゆっくりすぎる男の歩調に合わせ


とぼとぼと後ろをついていった。


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