恋……シヨ?‐武藤 雅晴編‐
「忍先輩──っ!!」
私がいないことに気付いて、先輩は探しているに違いない。
そう期待を込めて、力一杯叫んだ時だった。
「…何してるの?あんた達」
聞いたこともないような低い声が響き、私をどこかへ連れていこうとする二人の動きが止まった。
振り向くと、冷たい冷たい笑みを口元にだけ浮かべながら二人の肩を掴む忍先輩が──。
「あぁ?何だよ、俺達の邪魔する気か?」
「なんだこいつ、女みてー」
「おだまりっっ!!!」
薄ら笑いしていた二人も、先輩のどこからそんな声が出たの?っていうくらいの一層ドスの効いた声にびくりと肩を震わせた。
なんだか言葉と声が合致しないんですけども……。
でも忍先輩のこんなに怒った顔見たことない。
綺麗だから余計に迫力のある先輩の怒気に、私まで圧倒されて言葉が出てこなかった。
先輩は表情を変えずに、虫けらを見るような目で二人を一瞥する。