恋……シヨ?‐武藤 雅晴編‐
「くっそ……!」



絞り出したようなその声にはっと我に返ると、武藤くんの後ろでムクリと起き上がる竹田の姿が見えた。

そしてその手には、どこに転がっていたのか銀のパイプがしっかりと握られている。


私は恐怖で血の気が引き、口元を両手で覆う。



「…っのやろぉ!!」


「──っ!!」



竹田はそれを振り上げながらまたしてもこちらに向かってきた。


身体が硬直して動けない私をすぐさま後ろに押しやり、私を庇うように竹田を背に立つ武藤くんが

その形の良い唇で「この単細胞め…」と吐き捨てたのを私は聞き逃さなかった。


< 120 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop