今夜 君をさらいにいく【完】
「・・・だめだな・・・」
「・・・え?」
「正直、こういう状況に慣れていない。というか、今までこんな風に慎重になったことがないんだよ」
額に手を置いて、深いため息をついている。
そして黒崎さんはそのまま続けて言った。
「知らないうちにお前を傷つけてしまっていたのなら、俺もまだまだだな・・・」
そう言ってフッと苦笑いした。
「いえ、そんなことないです!私が勝手に想像していただけで・・・」
「想像?」
・・・!!!
私はなんてアホな事言ってしまったんだろう。
「黒崎さんが・・・その・・・してくれないのは私に魅力がないからなのかとか・・・」
だんだん声が小さくなっていく。黒崎さんの顔がまともに見れない。
顔から火が出そうなくらい熱い。
その時、ぎゅっと抱きしめられた。
「馬鹿だな・・・」
黒崎さんはそう言ってキスをしてきた。
さっき会社でしたキスとは違う、甘く深いキスだった。
何度も何度も求められ、それだけで私の体は熱くなる。