今夜 君をさらいにいく【完】
唇を離し、私の顔を見つめた。
「俺はお前を大切にしたかった。いつもと様子が違うお前を見て、無理に泊まらせてしまったんじゃないかと不安だった」
「すごく緊張していたんです・・・だって・・・夢みたいで・・・」
すると黒崎さんは私の頬を軽くつねって「ほら、現実だろ?」と、意地悪い笑みを見せた。
顔が紅潮して、鼓動がどんどん速くなっていく。
それを悟ってか、「落ち着けよ」と、笑いながら言われた。
セックスが初めてなわけではない。
だけどこんなに緊張した事は未だかつてない。
だって今まで職場で鬼のように厳しかった彼が、今私の服を脱がせ、優しく愛撫してくれているのだ。
そのギャップが、更に私の心を熱くさせた。
黒崎さんはとても上手だった。こんな事している最中でも、私は彼の過去を気にしてしまう。
こんなに上手いのならきっと今まで沢山の人と付き合ってきたに違いない。
藤本さん・・・みんな彼女のように、綺麗だったんだろうか。
「他の事考えるな」