今夜 君をさらいにいく【完】


宴会も始まり、しばらくしてから恵里香が到着した。


プラチナ会員との電話が2時間にも及んだらしい。たまにこういうお客様もいるが、電話内容の大抵は世間話だ。一人暮らしの高齢者は特に長電話が多い。だが、そういうお客様の相手をする事も大事な仕事だ。


恵里香はそういうお客様の接客が上手い。帰国子女のせいか、誰とでもフレンドリーに話せるのだろう。


恵里香は俺と新人の安田の間に無理やり入りこんできた。




「長電話お疲れさん」


ビールを一気に飲み干す恵里香にそう言うと、「このくらいどうってことないわ」と笑ってみせた。


頼もしい女だ。自分の意見をはっきりと言い、自分に自信がある所は俺に似ている。

昔から兄弟のようにずっと一緒にいたのだから性格も似てくるのだろうか。



恵里香が、近くに座っていた三条と桜井に話しかけている。


付き合っているのかと聞いていた。すると桜井は、否定はしていたものの、顔を赤らめている。


三条の事を好きだと言うのが顔に書いてある。




・・・若いな。


俺も何人か付き合った事はあるが、俺のこの性格についてこれる女はいなかった。


付き合うのも面倒くさい。


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