今夜 君をさらいにいく【完】
結婚も考える年なのだろうが、今の俺は仕事でいっぱいいっぱいだ。
結婚相手なんていつか親が決めてくれればいい。
3歩下がって大人しくついてくる、そういう女が俺には似合っているんだろう。
「あなた達、付き合っちゃえばいいのに。ねぇ黒崎さん」
いつも他人の事など気にしない恵里香が、三条達の事を俺に聞いてきた。
正直どうでもいい。
「そんな事どうでもいい。子供の恋愛ごっこなんて興味ない」
そう言うと、桜井は悲しそうな目で見つめてきた。
なんなんだ?
そんなの勝手にやってくれよ。俺には関係ない。
しかしその後、三条に色々突っかかる事を言われ、俺はムキになって言い返してしまった。
俺らしくもない。
イライラして煙草の本数が増える。
「三条君って面白いわね。あなたにあんな事言える子なんてめったにいないんじゃない?」
恵里香が嬉しそうに言う。
こいつも酔っているのが、目がとろんとしている。
「あいつはまだ青い。二十歳くらいの考えなんてあんなもんだろう」
「ねぇ、本当に恋愛は無駄な時間だと思っているの?」
「・・・まぁそうだな。今の俺には必要ないと思っている」