今夜 君をさらいにいく【完】
横で伊藤さんと三条が体を揺すっているが、それでも桜井は一向に起きようとはしない。
俺は側によって桜井の腕を掴んだ。
「課長、俺が運びますからっ」
それを見た三条が横から手を出してくる。
さっきの事もあってか、俺は引き下がらなかった。
大人げないとは思ったが・・・。
「大丈夫だ。お前も相当飲んだだろ?」
俺のその言葉に、三条は仕方がないといった表情で桜井の鞄を持った。
桜井をこうやって担ぐのは二回目だな。
一度目は意識があったせいか、あまり重いとは感じなかったが、今日は眠っているので結構重さを感じる。
ここで目を覚ましたらきっと驚くんだろうな。
想像すると笑いがこみ上げてくる。
俺の腕の中で眠っている桜井は気持ち良さそうに笑っている。
外に出ると、三条が苛立ちを隠しきれない様子で待ち構えていた。
「あとは俺にまかせてください」
そう言われた瞬間、「課長!」と他の奴らに呼ばれた。
「ほら、呼ばれてますよ」
俺は眠っている桜井を三条に託した。