今夜 君をさらいにいく【完】

「・・・いえ、申し訳ありませんが私は明日も仕事があるので帰らせていただきます」


そう断ると、部長の横にいる恵里香が“ちょっとー!なんで来てくれないの”と嫌そうな顔で口パクしている。



「部長、こいつらも明日早いので早めに帰らせてあげてくださいね」


冗談交じりに部長にそう言うと、「わかっている」と上機嫌で笑っていた。



「あ、桜井さん起きたっぽいね」



そう誰かがつぶやいたのが耳に入った。


桜井の方を見ると、状況がつかめずにあたふたしている。

顔はまだ赤い。



三条に対して目を潤ませて見えるのはあいつが酔っぱらっているせいか?


俺の足は無意識に三条と桜井の元へと向かっていた。




「・・・桜井、酔いは醒めたか」


「は、はいっ!」



2人は俺が問いかけると驚いた表情をした。


俺が人の心配をするのがそんなに珍しい事なのか。


桜井が勢いよく立ちあがってみせたが、足元がふらついている。


それでも「大丈夫です!」と、桜井は無理に笑っていた。



なぜか放っておけない。


こいつは部下の中でも一番ふらついていて見ていて危なっかしい奴だ。

以前からそういう面で気にはなっていた。




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