今夜 君をさらいにいく【完】
「三条、俺はこいつを送っていくから。お前は二次会に行ってこいよ」
そう言うと、周りの奴らの視線が一斉に俺に向けられた。
三条が俺の前に立ちはだかる。
しかし、伊藤さん達に連れていかれ、周りの奴らも次々にその場を去って行った。
桜井は困惑した表情で俺を見つめている。
まさか俺が送っていくとは思いもよらなかったのだろう。
そんなに三条が良かったのか。
タクシーがいる大通りまで2人で歩いていても、桜井は無言のままだった。
足どりも怪しく、立っているのがやっとの状態だった。
こいつどんだけ飲んだんだよ・・・
仕方なく、桜井の肩を抱えると「あ、あのっ大丈夫ですから!」と、全力で拒否られた。
それに対し、少しイラついた俺は更に強く桜井の肩を掴んだ。
嫌われている事はわかっている。
だが、なんか気に食わない。俺のこの優しさを無駄にするなんて良い度胸だ。
タクシーに乗り込んだ途端、桜井は気持ち良さそうに眠った。
早めに住所を聞いていて良かったと思った。
俺に寄りかかっている桜井はさっきの硬い表情とは正反対に、穏やかな顔をしている。
いつもこうだと可愛げもあるのに。