今夜 君をさらいにいく【完】
2Kの間取りはそう広くなかった。6畳ほどの居間と、4.5畳ほどの畳の寝室だった。
妹は急いで押し入れから布団を引っ張り出し、桜井を寝せるのを手伝ってくれた。
「・・・お店の方ですか?」
「え?ああ、挨拶が遅れて申し訳ありません。私は安奈さんと同僚の黒崎と申します。今日飲み会だったんですが、酔い潰れてしまったようで・・・」
そう言うと、不信感たっぷりだった妹の表情が、一気に和らいだ。
笑うとどことなく桜井に似ている。
「ああ!コールセンターの方ですか!姉がご迷惑おかけしました」
まだ幼いのにしっかりした受け答えだ。
桜井よりしっかりしてるんじゃないか?
「あの・・・この丸めてあるスーツ・・・もしかしてお姉ちゃん吐いたとか・・・?」
狭い部屋のせいか、さっきから異様な臭いがする。
俺が苦笑いすると、妹は急いで台所から大きめのビニール袋を持ってきて俺に差し出した。
「本当にすみませんっこれに入れてください!姉が起きたら言って聞かせますので・・・」
まるで桜井の親のようだな。
「いえいえ、お気遣いありがとうございます」
笑ってそう言うと、妹はホッとしていた。