今夜 君をさらいにいく【完】
そう笑いながら給湯室を出ていく部長。
強張っていた体の力が抜けると、ペタンと床に座り込んでしまった。
「どうして・・・?」
どうしてこうなるのだろうか。
必死にただただ無我夢中で頑張ってきただけだ。神様はひどい。私に何度試練を与えれば気がすむのだろう。
仕事に身が入らなかった。さっきまで飯田さんの事で頭がいっぱいだったはずが、今度は部長の事で頭がいっぱいになる。
「桜井さん!ちょっと来て!」
藤本さんが私の肩を強く叩いた。その顔は今までにない位青ざめている。
一緒に藤本さんのデスクに向かう。すごく嫌な予感がした。
「あなた、今日新規のお客様何人くらいいたか覚えてる!?」
「え・・・あ、結構いたと思いますが・・・」
「住所途中までしか入力されてないわよ!」
「え!?」
藤本さんがパソコンの画面を私の方に向ける。そこには、番地や建物名の部分が入力されていない状態の人が何人もいた。
「うそ・・・」