今夜 君をさらいにいく【完】




お昼だって外のオシャレなカフェでランチしたり、コンビニで買ったりなんかはしない。

毎日、前日の夕飯の残り物や、スーパーで冷凍食品半額の日に大量にまとめ買いした冷凍物を詰めたお弁当を持っていく。

これも節約術だ。



専門に通ってた頃はカフェでランチはもちろん、放課後はカラオケにショッピングと今では考えられない生活をしていた。

そのせいかあの頃の友人とも疎遠になってしまい、たまーにメールがくる程度。それも遠慮がちに遊びの誘いがくる。

羨ましいと思いつつもこれが現実なのだと自分に言い聞かせて断りの返信する。





朝の通勤ラッシュはひどいものだ。

ホームの一番前に並んでいたとしても電車が来ると、後ろの人達が私を押しのけて乗り込もうとしてくる。



『かけこまないでくださいー!かけこまないでくださいー!』



駅員が必死に呼びかけても次々と飛び乗ってくる人々。

沢山の人に足を踏まれながらも、今日は吊革に掴む事ができたので、まだマシだ。


その時、真後ろから声がした。




「桜井さん!」



振り向くことすらままならない状態だったが、どうにかして声のする方向へ首を向ける事ができた。


声の主は三条隼人(サンジョウハヤト)だった。


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