今夜 君をさらいにいく【完】
「お前、夜も働いてるんだろ?」
予想外な言葉に、箸が止まった。
「・・・え?」
夜の仕事の事をなぜ知ってるんだろう。まさかとは思うが・・・部長が言ったわけじゃ・・・
目を見開いた状態でいると、黒崎さんがプッと吹き出した。
「面白いなお前。この前妹に聞いたんだよ、飲み屋で働いてんのか」
「あ・・・はい・・・」
驚いた。綾に聞いたのか。そんな事一言も言ってなかったのに。
きっと会社の人にしゃべってしまって、怒られるとでも思ったのだろうか。
「家の事も聞いた。大変だったんだな・・・この間は悪かった」
「この間?」
「専門を中退した事を甘ったれだと言ってしまっただろ。・・・悪い」
あの黒崎さんが誤るなんて信じられない。
「い、いえ!私が事情を話さなかったんですから当たり前です!黒崎さんは悪くないです!」
勢いよく立ちあがると、フッと笑われた。
今日はよく笑われる日だ。でも黒崎さんに笑われるのは嫌じゃない。
もっと
もっと笑顔を見たいと思ってしまう。