シークレット ハニー~101号室の恋事情~


「もっとちゃんとって意味」
「ちゃんと……?」


一瞬どういう意味だろうって思ってからハっとして、五十嵐さんの胸を思いきり押した。


「そういう事ならできません!
自分からそういう……ちゃんとしたキスは無理です……」


騙された。告白よりはキスの方が、なんて思ったけど結局どっちも恥ずかしい事には変わらないじゃない!
そう思って非難の目で睨みつけていると、それを五十嵐さんが笑う。


「そんなに恥ずかしい? 俺がいつも普通にしてる事なのにそんな恥ずかしがられると自分がおかしく思えてくる」
「五十嵐さんは別にいいじゃないですか。……キスとか、慣れてそうだし」
「慣れてないよ。誤解されてると嫌だから言うけど、芸能界にいる時は誰とも付き合わなかったし」
「え……あ、音楽が忙しかったから?」
「それもあるし、会う人みんなが嘘ついてるようにしか思えなかったから」
「……対人恐怖症とかですか?」
「そこまでじゃないけどね」


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