シークレット ハニー~101号室の恋事情~


その声からは、さっきまで溢れていた余裕なんてこれっぽっちも感じられなくて。

―――私に惑わされたりしないのかな。
さっき感じた疑問を思い出す。


そして、力強く欲望のまま私を抱き締める五十嵐さんが愛おしく感じて、笑みがこぼれた。

五十嵐さんは私なんかに惑わされるのか。
止まれないくらい、惑わされてくれるんだ。
なんだ。一緒だ。


余裕をなくしてくれている事が嬉しくて、私も五十嵐さんの頭に手を回して抱き締め返した時。
今の雰囲気には似つかわしくない音が静かな空間に響いた。

言葉通り、ぐぅと鳴った私のお腹に、五十嵐さんは数秒動きを止めて。
それから、子どもみたいにすねた顔で私を見下ろす。



< 155 / 313 >

この作品をシェア

pagetop