シークレット ハニー~101号室の恋事情~
「存在が宙に浮いてるっていうのもおかしいけど、誰にも気に留められない、価値のない人間みたいに思えた。
芸能界にいた時が慌ただしすぎたからそのギャップでっていうのもあったんだろうけど、その時は暗い方向にしか考えられなくて。
そんな時、マンションのポストで葉月と一緒になったんだ」
そう言った五十嵐さんが私を見る。
「葉月は帽子を目深にかぶってる俺に笑顔で挨拶してくれて、顔色が悪いですけど大丈夫ですかって声をかけてくれたんだ。
葉月は覚えていないだろうけど」
「……すみません」
「いや、葉月にとっては普通の会話だったんだろうし覚えてなくて当たり前だよ。
ただ俺は、目を合わせて顔を見ても普通に笑顔で接してくれた葉月にすごく安心したんだ」
「あ、私テレビとかあまり見ないから、音楽も知らなくて……。
すみません。五十嵐さん有名だったのに失礼な態度取っちゃって」