青色キャンバス
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秋君が家を出てから4時間が経った。
時刻は20時。
「…お風呂に入ろう」
誰もいないのに自分の行動を何故か報告してしまう。
「……静かだな……」
脱衣場で服を脱ぎながら考える。
私、最近この静けさに耐えられなくなってる。
今までの私なら平気だったのに、今は…
秋君がいなくなった後の時間をどうしたらいいのかわからない。
―ガラガラガラ…
「はぁ……あたっ」
おでこをシャワーにぶつける。
鏡で見ると赤くなっていた。
「………いけない…。また、誰かといることに慣れちゃったら…」
失った時の痛みに耐えられない。もうあの日の絶望を味わいたくない。
だから何も望まないように生きてきたのに……
「駄目だよ…お願い、雛。もう誰にも心を許さないで…」
鏡に映るもう一人の自分に語りかける。
なんて悲しそうな顔なんだろう……
『雛、むくれてねぇで笑えって』
『嫌。だって蛍ちゃんが…ブタってっ…うぅっ…』
いつだったか、お菓子ばかり食べる私に「最近ブタに近くなったな」って言って私がすごく怒った日があった。
『あ、あぁー…泣くなって!嘘だし普通に冗談だって気づけよ』
『馬鹿!!本当はブタだって思ってるんでしょ!!もう蛍ちゃんなんてブタになっちゃえばいいんだ!!』
『あぁ?なんでそうなんだよお前は。いいからほら、笑え』
―グイッ
『いひゃーい!!』
蛍ちゃんが私のほっぺたを引っ張り、無理やり笑顔を作る。
『ほら、お前は可愛い。笑った時の顔が一番好きだ』
『うぅ…』
蛍ちゃんは優しく笑う。
その笑顔をズルいと思った。
そんな笑顔見たら、怒ってたのが嘘みたいに嬉しい気持ちで一杯になってしまう。
『頼むから、笑ってくれ』
蛍ちゃん……
蛍ちゃんは酷いね………
悲しくて、苦しいのに…
また笑えって言うの?
もう笑えないよ…蛍ちゃん…
蛍ちゃんが、傍にいないんだから…
湯気のせいか、涙のせいか…
鏡に映る自分が見えなくなった。