もうひとつの恋
彼女は申し訳なさそうな声で自分の事情を話し始めた。


「実は……うちの母が、桜井さんに一目会いたいってきかなくて……

親は来ない約束だからって言ったんですけど、一目見たらすぐ帰るからって、全然諦めてくれないんですよ」


本当に困ったという様子で話す彼女が気の毒に思えて、その日だけでいいならと結局会う約束をしてしまった。


彼女は何度もお礼を言って、会う時間を決めるとあっさり電話を切った。


待ち合わせは夜か……


日曜なのだから、てっきり昼間に会うんだと思っていた。


だけど彼女はサービス業だから、日曜も出勤しなくてはならないらしい。

勤め先が有楽町なので、仕事が終わってからでも銀座にならすぐに行けると思ったようだった。


7時半という時間に純は面倒くさいという気持ちになる。


わざわざ休みの日の夜に銀座まで出掛けていかなくてはいけないからだ。


でも仕方ない……


1日だけなんだし我慢するか……


ようやくそう自分を納得させて、日曜日はどう過ごすべきか考える。


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