もうひとつの恋
その言葉に俺はピタリと動きを止める。


やはり純ちゃんはなにか知ってるんだろうか?


ゆっくりと振り返ると、純ちゃんは口の端を上げてニヤリと笑った。


「まあ、とりあえず座れ」


仕方なくその場に腰を下ろして俺は純ちゃんが話すのを待った。


「部長はさ、前の奥さんと別れたとき、あの子のことだけが心残りだったんだよ

だから、訪ねてきてくれて嬉しかったんだろうし、罪滅ぼしみたいなもんなんじゃないか?」


「罪滅ぼし?」


「途中で投げ出す形になったからな?

あの母親に任せていいのか心配だったんだと思う

自分の子でもないのに、部長はお人好しなんだよ」


自分の子でもないのにって言葉にピクリとした。


それは俺にも言えることで、純ちゃんから見た俺だって立場は同じだ。


「お前のことは安心してんだよ、部長はさ

あの子は一緒に暮らしてやれなかった罪悪感みたいなもんだろ?

4歳から今まで一緒に暮らした自信みたいなもんが、健太にはあるんだよ

いわば向こうは客扱いで、お前は家族ってこと」


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