もうひとつの恋
そうだけど……


だったらなおさら、親父とお袋には聞きづらい。


あの子が最初にうちに来たときだって、俺たちにはなんの説明もなかった。


ただ、知り合いの娘だってだけで……


そのうち俺と花純美はばあちゃんちに預けられて、あの子は家に招かれてた。


どうみても俺たちには聞かせたくない何かがあるんだと、今ならわかる。


もちろん、当時はそんなこと思っても見なかったけど。


「……わかった」


それでも純ちゃんと美咲にこれ以上迷惑をかけたくなくて、俺はそう納得したふりをした。


「ありがと、教えてくれて」


にっこり笑うことも忘れない。


「じゃあ、俺、寝るわ」


そう言って立ち上がろうとすると、純ちゃんが俺の腕を掴んだ。


「まあ待て、まだ話は終わってない」


「え……だって、今もう話せないって……」


「部長の過去は話せないけどな?

俺の知ってる部長の話なら話せる」


ニヤッと笑う純ちゃんのは、なにかいたずらを思い付いた時のような顔をしている。


仕方なく立ち上がりかけた足を元に戻して、聞く体勢を作った。


< 430 / 432 >

この作品をシェア

pagetop