朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
二人きりになった暁と柚は、しばらく黙り込んでいた。


柚は暁の顔を見ようとせず、下を向いているので、暁にはまだ柚が怒っているのだと思った。


「柚、再び聞いてほしい、あの日のことを。

あの日、ふらふらになりながら柚の部屋に向かっている途中で、無理やり昇香に手を引っ張られ知らぬ部屋に入ってしまったのだ。

身体がいうことがきかずに拒みきれず、部屋から出ることができなかった。

そして昇香と接吻をしてしまったが、あれは余から口付けたのではない。

昇香にはもう二度とこのようなことはするなときつく叱った。

あれは余の意思ではないのだ。信じてくれ」


 柚は黙り込んだまま、俯いて暁の方を見ようとしなかった。


暁は、これでも駄目かと思い肩を落とした。


このままでは結婚が破談となってしまう。


それだけは嫌だったが、柚の気持ちが暁にない以上、無理強いすることはできないと思った。


 すると、柚がおもむろに羽織っていた薄衣を脱ぎ、襦袢一枚だけとなった。


「ど、どうした、柚」


 襦袢を着ているとはいえ、下着姿のような格好に、暁は動揺を隠しきれなかった。


柚は黙ったまま、じっと暁を見つめ、意を決したように襦袢を脱ごうと手をかけた。
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