朱雀の婚姻~俺様帝と溺愛寵妃~
「私のこと、許してくれるのか?」


「許すも何も、余は何も怒ってはおらぬぞ?」


 柚が顔を上げると、慈しむような笑顔で柚を見つめている暁の瞳とぶつかった。


胸がきゅっと締め付けられて、ああ私は本当にこの人のことが好きなんだなと柚は思った。


「あのな、私を抱けって言ったこと、やけになって言ったわけじゃないんだ。本当にそう思ったから言ったんだ」


「柚……」


「なあ、暁。今夜、私を暁の嫁にしてくれないか?」


 暁は、自分の耳にも聞こえそうなほど大きく胸がドクンと動いた。


抱いたからといって、嫁になるわけではない。


婚姻の儀をして初めて二人は夫婦となる。


しかし、柚が言いたいことは、そういう形式のことではないことを、暁は分かっていた。


形式なんてものよりも、もっと深い心の結びつき、覚悟、そういったものを柚は求めているし、暁もまた、それを強く望んでいた。


しかし……。
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