重なる身体と歪んだ恋情
酷く退屈なパーティは終わり。


「それでは千紗、粗相の無いようにな」


そう言って桐生家の用意した車に上機嫌で乗り込む兄には冷ややかな目を。


「千紗さん、お幸せにね」

「お祖母様……」


私の冷たい手を取って涙ぐむお祖母様。


「あぁ、こんなに緊張なさって」


その手をそのまま頬に寄せて温めてくれる。


「大丈夫よ、あなたが心から愛せば彼もきっと答えてくれるから」

「……」


それは無いと思うの。


「私とお祖父様もあなた達と同じだったのよ?」


確かに、お祖母様とお祖父様も顔も見ることなく結婚されたと何度も聞いた。

けれどお二人はとても幸せそうで、お祖父様がなくなった今でもお祖母様は毎朝、夫である彼に手を合わせてる。


「それにとてもお優しそうな方ではないの、私安心したわ」

「……えぇ、そうね」


見た目だけは優しそうな私の夫。

お祖母様は近くで見ていないから分からないのね。

彼の瞳の冷たさを。

けれど、それを言っても仕方の無いことだし何よりもお祖母様に心配をかけたくないから、


「努力します」


そう答えると、お祖母様はニコリと笑って私の手を離した。

そして兄の隣に座り窓越しに手を振るお祖母様。

私はそれに何とか笑顔で手を振りかえした。


ねぇ、お祖母様。

お金で私を買った彼を、

どうやって愛せばいいの?


この質問に答えてくれる人は、きっとどこにも居ないわね。
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