重なる身体と歪んだ恋情
社に戻り書類に目を通す。
緑川の仕事は早く、鉄の話もすべて理解できた。
他の製鉄所を作るのではなく、八幡製鉄所の拡張工事が決定したらしいとのこと。
そうなれば軍需も拡大され兵の数も増える。
必然、軍服の需要も増えるわけで。
生糸の販売通路を押さえておくか。
しかしそうなると商売相手は軍人になるわけで。
「……気が重いな」
呟く声に緑川が「なにか?」と聞いてきたので軽く首を振って誤魔化した。
軍人と言うのは妙にプライドが高くて扱いが面倒だ。
なぜあんなにも威張っていられるのか。
所詮、人殺しだというのに。
「社長、お電話が」
その声に「誰です?」と返せば、
「佐藤八重様とおっしゃる方からです」
緑川はあっさりと八重の名前を口にした。